| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-063
近年対流圏オゾン(O3)濃度が増加している。O3は葉の気孔を通して植物体内に取り込まれることで内部に酸化ストレスを与え、光合成速度の低下や乾物成長低下を引き起こすことが報告されている。一方、大気中のCO2は増加の一途をたどっている。CO2は植物の光合成の基質であるため、高CO2によって光合成速度や成長の促進が期待できる。しかし、高CO2環境に順化した植物はダウンレギュレーションと呼ばれる光合成能力の低下を起こす可能性が指摘されている。またO3やCO2が樹木へ与える影響には樹種間差があることが知られている。高CO2環境では一般に気孔が閉鎖気味になるのでO3の取り込みが抑制されると予測され、O3による成長低下の相殺や、補償成長の促進が起こるという報告もある。そこで、北海道の代表的な落葉広葉樹であるダケカンバ、ウダイカンバ、シラカンバを対象樹種として, 高CO2環境でのO3による成長への影響の樹種間差を明らかにすることを目的に実験を行った。
ウダイカンバ、シラカンバに比べてダケカンバではO3による成長低下が著しかった。これはダケカンバの気孔コンダクタンスが他より高く、O3を多く取り入れたためではないかと考えた。ウダイカンバで高CO2によるダウンレギュレーションが見られたが、個体乾重量は増加した。逆にダケカンバではダウンレギュレーションは見られず、個体乾重量は減少した。これは葉の寿命や葉数などが減少したために起こったと考えられる。しかし、O3とCO2の有意な交互作用はどの樹種においても認められなかった。このようにO3 およびCO2に対する応答には、同じカンバ類という近縁種間でも樹種間差異が存在することが分かった。