| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-073
大気中CO2濃度増加に対する樹木の成長応答を解明することは、種の共存機構を理解する際に重要である。多年生植物の樹木はシュート(枝+葉)を部材とする構造をもつので、高CO2環境に対する種の応答の差異をシュートの挙動を通じて解明することができる。ダケカンバ・ウダイカンバ・シラカンバは冷温帯を代表する落葉樹で、強光利用種という類似した性質を持つ。シラカンバは典型的先駆種とされるが、残りの二種の成長は比較的遅く、寿命は200年に達する。
CO2付加を北海道大学札幌研究林の開放系大気CO2増加(Free Air CO2 Enrichment)施設で行い、褐色森林土区に2年生苗を2010年早春に植栽した。FACE区のCO2濃度は約500ppm、対照区は大気CO2濃度(約380ppm)とした。2010年6~12月に各18個体の頂生枝の伸長量と着葉数を週1回測定した。
高CO2区では、ダケカンバの相対成長量(伸長成長量/植栽時の苗高)・個葉の平均寿命が増加したが、積算出葉数には変化はなかった。本種は前年に翌年の出葉数を決める固定成長的な特徴を有することが反映され、成長停止が他の二種より早かった。ウダイカンバの伸長成長量は高CO2によってやや増加したが、着葉数や葉寿命は変化せず、CO2に対する応答が小さかった。シラカンバは高CO2区で相対成長量と積算出葉数が増加した。本種に特徴的であったが、高CO2区では食害が少なく被食個体の補償成長は活発であった。近縁なカンバ類3種でも、高CO2に対する応答によって初期成長における種特性がより明確になったと考えられる。