| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-080

乾燥地における塩生植物の適合溶質と窒素安定同位体比の関係

*西澤誠,松尾奈緒子(三重大・生物資源),Ailijiang Maimaiti,岩永史子,山中典和(鳥取大・乾燥地研究センター)

中央アジアの乾燥地では土壌塩類集積が近年,深刻な問題となっている.こうした地域においても生存できる塩生植物の耐塩メカニズムのうち,細胞内にアンモニア化合物やアミノ酸などの適合溶質を蓄積することで吸水を維持する浸透調節の重要性が指摘されている.養分が極端に少ない乾燥地においてアンモニア化合物やアミノ酸を蓄積する塩生植物がどのような窒素利用様式を持つのかを明らかにするため,中華人民共和国・新疆ウイグル自治区の塩分の析出状態や植生が異なる11サイトにおいて,葉と土壌の有機物中の窒素安定同位体比(δ15N)を調べた.葉のδ15Nは,種によって大きく値が異なった.特に,Tamarix spp.に関しては他の種よりも比較的低い値を示した.また,葉のδ15Nと土壌塩分濃度とは関係が見られなかった.一方,土壌のδ15Nも土壌塩分濃度と関係が見られなかったが,タクラマカン砂漠のような砂砂漠を除き,大きな値を示すものが多かった。葉のδ15Nと土壌のδ15Nの差(以下,15Δ)は大きくプラスの値やマイナスの値を示すものがあった.特にTamarix spp.に関しては,マイナスの値を示すものが多かった.15Δの値は細胞に含まれている窒素化合物の影響だけでなく,共生菌の影響も受けて決まると考えられる.ポスター発表ではこの15Δの決定要因を考察する.


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