| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-086
野生動物による花粉媒介が必要な農作物栽培では、農地における花粉媒介者や結実は、周囲の森林など非農地の存在に景観スケールで影響を受けることが指摘されている。異形花柱型の自家不和合性であるソバも、花粉媒介をセイヨウミツバチ、ニホンミツバチ、その他の昆虫などに頼っているため、圃場周囲の影響を受けると予想される。こうした予測のもと、茨城県常陸太田市のソバ栽培地帯の圃場において、訪花昆虫の採集とソバの結実率調査を行った。その結果、セイヨウミツバチでは養蜂用巣箱からの距離の近さが、ニホンミツバチでは半径数キロ圏内の森林面積が、ミツバチ以外の昆虫では半径数百メートル圏内の森林と草地の面積が、それぞれ関係していた。さらに結実率をみたところ、後者二つの景観要素と正の関係がみられた。以上の結果は、周囲に森林や草地などの植生が豊富なソバ畑ほど花粉媒介者の数が多く結実率も良くなることを示すとともに、その効果の把握においては、複数の景観要素を異なるスケールで考慮する必要があることも示している。