| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-088

大峰山脈釈迦ケ岳周辺における樹木枯死・倒伏域の分布と地形条件

阿部聖哉(電中研・生物環境)

近年,日本各地で山岳域のブナ自然林や亜高山帯針葉樹林に,樹木の枯死や植生の衰退が観察されている.植生の衰退は水源地域の生態系サービスに深刻な影響を与えると考えられるが,枯死・倒伏が発生しやすい地形条件については十分に明らかにされていない.そこで本研究では,日本有数の豪雨地帯である紀伊半島に位置し,稜線部を中心にブナ自然林や亜高山帯針葉樹林が広がる大峰山脈釈迦ケ岳周辺において,衛星解析により樹木枯死・倒伏域の分布を抽出し,GISを用いて地形条件との関係を解析した.

パンクロ0.41m,マルチスペクトル1.64mの解像度を持つGeoeye-1衛星のオルソ補正済み画像をパンシャープン処理し,オブジェクトベース画像解析ソフトeCognition 8.0を用いて,Scale 100,Shape 0.1, Compactness 0.5で領域分割を行った.現地調査結果をもとに,領域分割画像を判読して得られたサンプルを目的変数,輝度やテクスチャを分割パラメータとしてCARTによる判別分析を実施した結果,緑色光と近赤外光の平均値,赤色光の標準偏差,近赤外光のテクスチャ指標によって,95%以上の判別率で樹木枯死・倒伏域を抽出することができた.

抽出された樹木枯死・倒伏域の分布と,基盤地図10mメッシュから計算した標高,傾斜,斜面方位との関係を検討した結果,枯死・倒伏は標高1500m付近の平坦な稜線および南東斜面に集中して分布していることが明らかになった.この結果は,現地における幹折れ,根返り木の倒伏方向と反対の方位を示しており,台風時などの南東向きの強風が樹木の枯死・倒伏に影響している可能性を示唆している.そこで,フォーカル関数を用いた凹凸度,陰影起伏関数を用いた南東方向からの風衝地形指標等を説明変数として,樹木の枯死・倒伏の発生可能性が高い地形条件を予測するための回帰モデルを構築した.


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