| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-098
かつては国土の3割以上の面積を有していた半自然草地の減少が著しく、草原に依存する動植物が絶滅の危機に瀕している。そのような中で、東海地方の茶産地では、良質茶の栽培を目的として、茶園にススキの敷草を施す農法が行われており、その資材源としての半自然草地(茶草場)が大面積で維持されている。
これまでの成果で、在来種の種多様性に与える影響の大部分が土地改変であることが明らかになり、草原の多様性には歴史性が反映されていた。2010年には対象地においてランダムに60パッチの草原・草地を抽出し、全てのパッチ内で10コドラート(1m 2)の調査区を設定し植生調査を実施しし、種毎の成立・維持機構の解明を試みた。各パッチの植生データを統合し、出現頻度としてまとめ、各パッチの環境要因(土壌の化学性、土壌水分、光量子密度、斜面方位・角度、土地改変履歴、刈取り回数)を整理し二項分布を仮定したGLMにより分析を行った。その結果、①土地改変を受けていない刈取りにより長期間維持されている草地に生育する種群としてアキカラマツ、ワレモコウ、ツリガネニンジンが抽出された。さらに、①の条件に加えて大きな草原面積を必要とする種群としてオミナエシ、タムラソウ、トダシバが明らかになった。また、③どのような環境にでも成立可能な種群としてススキ、ミツバツチグリ、タチツボスミレが抽出された。
茶草場に生育する植物の環境要因が種毎に明らかになり、茶草場の事例は地域の野生生物資源を利用することにより茶生産が維持され、また、その茶生産が貴重な半自然草地である茶草場を守っている事実が明らかになった。