| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-110
環境保全型の農地管理方法として不耕起栽培がある.不耕起下では土壌のかく乱が少なく,有機物残渣が土壌表層に残るため,土壌微生物群集の中で糸状菌が優占し分解過程や物質循環に重要な役割を果たす.糸状菌の多様性は有機物分解などの生態系機能に関わっていると考えられるが,不耕起土壌における糸状菌の多様性に関する研究は少ない.そこで,不耕起栽培が腐生菌(糸状菌の一つのグループ)の多様性に与える影響を明らかにすることを目的として,横浜国立大学構内の圃場に不耕起区と耕起区を設け,リターバッグ法によりライ麦の分解率と腐生菌の多様性を解析した.多様性解析にはリアルタイムPCR-T-RFLP法を用い,腐生菌群集の標的DNA(ITS領域と,LSU rRNA のD1領域)からT-RFs(制限末端断片)プロファイル(ピーク高と断片塩基長)を得て,1つのT-RFを1つのOTU(operational taxonomic unit:操作的分類単位)として不耕起区と耕起区を比較した.その結果,リターバッグ設置2ヵ月後の分解率,腐生菌の多様性および腐生菌DNA量は耕起より不耕起で高い値を示した.土壌含水量,および土壌動物の目レベルの多様性は不耕起で高い傾向があり,腐生菌の多様性と正の相関を示した(P<0.05).以上より,不耕起土壌では,土壌含水量および土壌動物の多様性が腐生菌の群集構造に影響を与える要因であると考えた.