| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-119
日本にはシダ類を寄主植物(食性)とするハバチが約50種分布し,その大部分はシダハバチ亜科に属している.東アジアを中心に分布しているシダハバチ亜科の近縁2属,トガリシダハバチ属Thrinax およびナガシダハバチ属Strongylogaster に属する日本産20種は,そのほとんどは単食性で,ただ1種のシダを寄主植物としている.ハバチ類の近縁性とシダ類の近縁性は一致しておらず,さらにこれらシダハバチ類の近縁種は異なる科や属のシダを寄主としていることが多い.これら20種のうち,同じシダを寄主とするハバチが数種存在するが,それらのハバチは,別属であったり,また同属であっても形態的に異なるグループに属しており,厳密な意味での近縁関係ではない.これらの事実は,シダハバチ類の種分化が寄主転換を伴うことを意味している.
本研究では,まず,近縁と言われているトガリシダハバチ属とナガシダハバチ属の系統関係を,塩基配列情報を用いて明らかにした.また,シダハバチ類の寄主転換が,前述のよう系統的に近縁なシダ種間で起こってきていないといわれていることから,寄主シダ植物の種間の距離,すなわち食性となるシダの分布の類似性が,シダハバチ類の寄主転換の要因となっているのではないかと考えた.この仮説を検証するために,得られた種数が多かったナガシダハバチ属8種間の遺伝距離と,それらの寄主植物であるシダ種の分布の類似度パラメータを比較した.その結果,種間の遺伝距離と分布の類似度のパラメータの間で相関がみられた.