| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-128
外生菌根菌の土壌中分布の理解のために、菌鞘から伸びる外部菌糸体構造に着目した。外部菌糸は、感染した樹木細根から離れた場所にまで菌糸を伸ばし、養水分の吸収・輸送を行う。また、土壌中に張り巡らされた外部菌糸は樹木細根への感染源となりうるため、外部菌糸を持つ外生菌根菌は、外部菌糸を持たない菌に比べて感染速度が速い。調査は降雨の続いていた7月と17日間降雨が見られなかった8月のそれぞれで、シラカシ樹下で深さ1mまでの土壌コアサンプリングを行った。その結果、乾燥期の8月のシラカシ細根現存量は湿潤期の7月に比べて表層10cmで減少し、50cm~70cmで増加した。シラカシの水分吸収維持は、土壌からの水分吸収を維持するために中・長距離型の外生菌根への感染率を平均感染率15.95%(標準誤差1.74)から17.44%(標準誤差3.17)へとわずかに高めた。さらに、水分コストの負荷と考えられるCenococcum geophilumの現存量が土壌表層で顕著に減少し、水分吸収を促進すると考えられる中・長距離型の外生菌根数が増加した。これによって形態学的分類による外生菌根の土壌中分布は、土壌表層において短距離型群集から中・長距離型群集に変化した。外生菌根菌の分布は、シラカシのように細根ターンオーバーの早い樹種においては短期間で変化しうるものであり、特に外部菌糸を持つ外生菌根においては特に顕著な変化がみられることが示唆された。