| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-139

土石流跡地における樹木の更新特性

*川上祐佳(新大・自然研),権田豊(新大・農),崎尾均(新大・農)

新潟県佐渡島で1995年に発生した土石流の跡地において、優占樹種であったケヤマハンノキ、オノエヤナギ、カツラ、サワグルミを対象に調査した。調査地は凝灰岩質からなり、集中豪雨により上流部の山腹が崩壊・土石流化し、川岸にテラス地形が形成され、現在、若齢一斉林が成立している。そこにベルト状の調査区を設け、林分構造および立地環境(土壌・光)、種子散布量を調査した。

調査の結果、ケヤマハンノキとオノエヤナギ、サワグルミとカツラに共通の傾向が見られた。前者は明るい立地に圧倒的に優占、まとまって分布していたが、稚樹はほとんど見られなかった。また、樹幹解析より土石流直後に多くの個体が更新したと推測された。一方、後者は小径木が多く、やや暗い場所に分布していた。土石流直後に定着したと思われる個体はほとんどなく、多くは土石流の3~4年後から定着し始めたと思われた。また、この2種には大径の礫が現われる傾向がみられた。種子散布量については、種子サイズの大きいサワグルミは母樹付近にしか散布されなかったのに対し、種子サイズの小さいオノエヤナギ、ケヤマハンノキ、カツラは調査区一面にほぼまんべんなく散布されたと推測された。

以上のことから4種の分布様式の違いは、種子散布量の空間的な偏り、好適な光環境・基質、各樹種の持つ初期成長速度の違いとそれにともなう競争に起因すると考えられる。


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