| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-143

北海道有珠山火口付近の植生遷移と微生物分解

*大瀧みちる,竹内史子,露崎史朗(北大院環境)

北海道における火山噴火後の遷移は、裸地に先駆種であるオオイタドリなどの草本が侵入し、ついでドロノキなどが優占する森林に移行することが多い。遷移機構には、地上部環境の変化ばかりでなく、地下部環境の変化も大きく関与している。特に、リター分解は、土壌形成の鍵となり、それに関与する微生物相の遷移に伴う変化を明らかにする必要がある。そこで本研究では、北海道有珠山において、噴火から10年、33年、100年経過した火口付近においてオオイタドリとドロノキのリターを採取し、リター付着微生物相とバイオマスの定量的な解析を行った。微生物定量にはリン脂質の脂肪酸(PLFA)解析を用いた。PLFA量は微生物バイオマスと相関があり、各群集のリターに付着するPLFA量を比較することで微生物分解の寄与率を見積もれる。さらに、菌類・グラム陰性菌・グラム陽性菌・放線菌という微生物群は、それぞれ特徴のあるPLFAを生産するため、微生物群ごとのリター分解への寄与度を定量できる。

植生は、噴火後10年は裸地、噴火後33年はオオイタドリ草地およびドロノキ林、噴火後100年はドロノキ林ではあるがオオイタドリの優占する林床とそうではない林床となっていた。PLFA解析の結果、噴火後の経過時間が長く遷移が進行した群集におけるリターほど付着微生物由来のPLFA総量が増加していた。さらに、遷移が進行するにしたがい、PLFAの種類も多種になり、多様な微生物群が分解に関わることが明らかとなった。これらの結果より、遷移が進むに従いリターの微生物分解が促進され、土壌資源量も増加することが示唆された。また、菌類が微生物分解の主要な役割を担っていることが、有珠山におけるリター分解の特徴であった。これらのことは、土壌水分やpH、リターの化学組成などがリター分解に大きく関与していることを示唆している。


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