| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-145
増水時の網状流路が本川から取り残されてできるワンドは、すり鉢状の起伏に富んだ地形で、伏流水の湧出や本川との連結により周期的に水分環境が変化する。演者らはこれまでに、ワンドの高い植物種多様性が、これら多様な水分環境に加え、細砂を多く含む表土によって保持されていることを示した。しかし、ワンドのような比高の低い場所では、不定期な河川攪乱により植生の流出や物理的な地形変化が生じやすい可能性がある。本研究では、大きな攪乱のなかった複数年でワンドとその周辺に成立する植生を調査し、ワンドとワンド以外の群落における植物種組成の変化を明らかにし、その要因について考察する。
調査は、2008年と2010年に新潟県五泉市早出川中流域で行った。本川の両岸にある4ヶ所のワンドと、それらの周辺に相観植生の異なる7サイトを選んだ。各サイトには1m×20mの植生調査ベルトを2~5本、計44本設置し、1ラインにつき1m×1mのコドラート20個を設けた。植生調査では、各コドラートに出現した維管束植物の種名を記録した。環境調査では各コドラートで表層土壌を採取し、粒径を3区分に分類した。また、各コドラートのレベル測量と高精度GPS標高測量を行った。さらに、ワンド内には水位計を設置し、定期的に水位を記録した。
同じコドラートにおける2年後の再調査で出現した植物種は、ススキ群落で著しく減少したが、4ヶ所のワンドでは変化が無かった。ワンドに出現した植物では、有意に増加、または減少した種があったが、一貫した傾向は見られなかった。各サイトの物理環境と植物種の生活史特性から、河畔域で毎年発生する軽度の攪乱下での植生遷移について考察する。