| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-161

ヒナの生存率と親の浮気: 捕食リスクが高いとつがい外父性は増えるか

*油田 照秋 (北大・環境科学院),小泉 逸郎 (北大・創成)

DNA解析の発展にともない、一夫一妻性といわれる鳥類でも、その多くがパートナー以外の子供を残していることが明らかとなってきた。これは従来の鳥類の配偶システムの概念を覆すものであり、多くの研究者がその適応的意義を探るため多大な精力を費やしてきた。こういったつがい外父性(Extra-pair paternity, EPP)の頻度は、種間、種内で非常に高い変異があり、これまでに様々な仮説が提唱されてきた。EPPに影響する要因として、主に繁殖個体の特徴が考慮されてきたが(例えば、オス親の貢献度、優位性、繁殖時期など)、環境などの外部要因は、あまり検討されていない。特に、捕食圧は親の行動や雛の生存率を介してEPPに影響する可能性があるが、野外でコントロールするのが困難なため、これまで捕食圧とEPPを検討した例はない。

本研究では、「捕食により雛の巣立ち率が低い場合、オス親はbet-hedging戦略をとり、リスクを分散させるためにより多くのメスと交尾をする」と仮説をたてた。逆に「メスは捕食リスクの高い場所では、より早くヒナを巣立たせるために、オスの協力を得るべくパートナーのオスに忠実に振る舞う」と考えた。

この仮説を検証するため、北海道苫小牧のシジュウカラ(Parus major) を対象に、カラスによる捕食圧の異なる二地域のつがい外父性を比較した。両地域は約2.5kmしか離れておらず環境条件は似ているが、捕食圧(巣がカラスに襲われ少なくとも1羽が捕食された巣)は86.7%(26/30)と0%(0/25)と大きく異なる。本発表では、先述の仮説を検討し、EPPにおける捕食圧の重要性について議論する。


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