| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-163
育雛中の親鳥は、種ごとに異なる繁殖上の制約のもとで雛への給餌速度を最大化しつつ、自身のエネルギー要求を満たさなくてはならない。我々は、雛への給餌方法が異なる 2種類のウミスズメ科の海鳥の餌選択と採餌行動を比較した。ハシブトウミガラスは、雛の餌を1度に1つしか運ばないシングルプレイローダーであり、ウトウは、雛の餌を 1度に複数くわえて運ぶことができるマルチプルプレイローダーである。本研究では、アラスカ・セントジョージ島に繁殖するハシブトウミガラスおよび、北海道・天売島に繁殖するウトウを対象に、雛の餌および親鳥自身の餌(種とサイズ)を、直接観察と胃内容物分析によって明らかにした。また、潜水行動を深度・温度記録型データロガーによって記録した。ハシブトウミガラスは、大きな餌(スケトウダラ;>100mmなど)を雛へ給餌した。一方、自身はより小さな餌(スケトウダラ;<80mmやオキアミなど)を利用していた。雛の餌をとるための潜水における潜水深度は、自身の餌をとるための潜水における潜水深度よりも深かった。対照的に、ウトウが雛に給餌した餌と自身が利用した餌に違いはなかった。ウトウの主要な餌は、イカナゴやホッケの0 歳魚またはカタクチイワシであった。自身の餌を採るための潜水行動と雛の餌をとるため潜水行動の間にも違いは見られなかった。ハシブトウミガラスは、シングルプレイローダーであるため、給餌量は選択された餌サイズに強く依存する。そのため、潜水にコストをかけて深く潜ってでも大きな餌を雛の為に選択したのだと考えられる。一方、ウトウ等のマルチプルローダーである種は、大きい餌を少数捕獲する以外に、小さな餌を多数捕獲することでも、雛への給餌速度を安定させることができる。そのため、ウトウでは、自身の餌と雛の為の餌の選択において選好性の違いが見られなかったと考えられた。