| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-169
行動は動物に見られる特徴的な形質の一つで、採餌や危険回避、繁殖といった目的を達成するために身体を環境内で移動させる現象である。動物の行動は古くから多くの研究者に注目されてきた。1970年代から隆盛になった行動の研究の一分野である行動生態学では、主に行動の帰結とその適応度に焦点を当てて適応行動を明らかにする一方で、その帰結に至るまでの意志決定過程を無視してきた。しかし、意志決定過程には生理的な状態や情報処理といった内的な要素と、環境といった外的な要素の相互作用が反映されていると考えられるため、適応行動の背後にある意志決定過程を明らかにすることは意義がある。特に近年、動物の時刻tにおける位置データを取得し、歩行軌跡の観点から研究するMovement ecologyという分野が盛んであり(PNAS 2008特集)、歩行軌跡には動物の意志決定過程が反映されていると考えられ、それを解析することで意志決定過程の一端とその適応的意義を知ることができる。
本研究ではアズキゾウムシ(C.chinensis)の幼虫・蛹を宿主として寄生するコマユバチの一種Heterospilus prosopidisの宿主探索行動を自動追尾システムを用いて歩行軌跡データを取得し、その意志決定過程を解析した。解析方法として、(i)確率過程のあてはめ、(ii)自己組織化マップを用いた運動パターンの分類、(iii)局所的探索と大域的探索の切り替え、の3つを適用した。それにより、確率過程として捉えた場合の適応的意義、環境からの情報を基にした運動パターン変化、学習を基にした探索方法の切り替えダイナミクスを知ることができた。それを基に、行動を形成するプロセスとしての、記憶・学習をベースにした意志決定過程について考察する。