| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-203
雄が持つ様々な二次性徴形質には、コンディション依存形質と遺伝的形質がある。従来、雌のつがい外交尾の目的として、遺伝的利益が広く議論されており、雄の遺伝的形質が雌のつがい外交尾行動に影響を与えると考えられてきた。しかし、コンディション依存形質にも雌のつがい外交尾に影響を与えることを示唆する研究もある。これには先行研究において、単につがい外子の数やつがい内父性の保持率と雄の形質計測値を比較し、雌のつがい外交尾追求の強度を推測している点に問題があり、実際の雌の行動に注目した研究例はほとんどない。それには、これまでに野外調査における雌のつがい外交尾追求の指標となるものが確立されていなかった点にある。最近、ツバメで、雌が雄のもとから飛び去る回数と巣内のつがい外子の出現頻度に関係がみられ、雌の飛び立ち回数をつがい外交尾追求の強度として扱えることが示唆された。本研究では、まずツバメにおける社会的つがい形成時の雄の形質に対する雌の選好性を明らかにし、次に雌がつがい外交尾追求の際に社会的夫のどの形質を評価してつがい外交尾行動を行うかを検証した。その結果、雌がつがい相手を選択する際にはコンディション依存形質と遺伝的形質の両方に選好性を示すが、つがい外交尾追求の判断に際して、相手雄の遺伝的形質のみを評価しており、遺伝的に質が低い社会的夫とつがった場合に、つがい外交尾追求が高まることが分かった。以上により、雌は社会的夫を選択する際にコンディション依存形質と遺伝的形質の両形質を利用し、複数の形質から雄の質を総合的に判断していることが示唆され、つがい外交尾の追求に雌は遺伝的利益を追求するということが実証された。