| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-205
ニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)は、他の大型有蹄類に比べて、生後1年間の初期成長が極めて著しい。また雌雄ともに1歳で性成熟を完了して、その年の晩秋から冬に交尾をし、メスは翌年の春に出産する。しかし例外として0歳での妊娠や秋の出産が、各地で散見されている。その原因は、単に個体差なのか、何らかの環境の変化が関係するのか詳細は明らかではない。雑食性の本種は、秋に堅果類を好んで食べる。栄養価の高い堅果類は、成長過程にある若齢個体には重要な食物であることが伺える。そのため一定周期で繰り返される豊凶の影響を大きく受けることが予測される。そこで本研究では、堅果類の豊凶が成長や性成熟の進行に影響を与えるという仮説を立て、若齢個体において豊作時を経験した個体と凶作時を経験した個体間での違いの有無を検証した。
本研究では、2005~2010年に兵庫県で狩猟および有害捕獲で捕獲された0~2歳までのオス78頭、メス54頭を用いた。まず毎年9月の豊凶調査にて算出された豊凶指数を用い、各個体を捕獲地点の豊凶指数ごとにグループ分けした。次に歯の萌出交換による齢ステージ別に体長をプロットした。また精巣と卵巣の組織所見より、オスでは精子の出現率、メスでは各成熟段階の卵胞数と黄体数の割合を季節別に算出した。体長のばらつき、精子出現率や卵胞・黄体数の割合の季節変化の違いを豊凶グループ間で検討することで、堅果類が本種の成長や性成熟にどの程度どのように影響するのかを考察する。