| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-209
集団で生活をする社会性昆虫にとって、フェロモンを介した個体間のコミュニケーションやカースト分化に代表される分業システムは、複雑な社会を制御する上で必要不可欠なものである。コミュニケーションに関わる化学物質であるフェロモンは、主に外分泌腺から分泌されており、社会性昆虫は単独生活の昆虫と比べると多様な外分泌腺を発達させている。しかし、シロアリ目における外分泌腺やフェロモンに関する知見は膜翅目昆虫と比べると乏しく、カースト分化に伴う外分泌腺、フェロモンの分化を調べた例は少ない。
異なるカーストはそれぞれ異なる社会機能を果たしているため、他個体とのコミュニケーションに使われる外分泌腺の形態や機能がカースト分化の際に変化すると予想される。
我々の予備観察では、オオシロアリHodotermopsis sjostedti のソルジャーでは、腹板腺上皮が著しく肥厚していた。腹板腺は道しるべフェロモンを分泌する器官として知られているが、ソルジャーにおける機能は調べられていない。しかし、形態学的な違いから分泌される物質、ひいては分泌腺の機能が分化していることが示唆された。
本研究ではこのオオシロアリの腹板腺に着目し、カースト間での腹板腺の分子的な差異を検出するため、ソルジャーとワーカーの腹板腺においてカースト特異的に発現しているタンパク質を二次元電気泳動法により解析することを試みた。その結果、ソルジャーの腹板腺において特異的に発現量が上昇しているタンパク質が複数存在することが明らかになった。LC-MS/MSを用いてこれらのタンパク質の同定を行い、機能推定をすることで腹板腺におけるカースト間での機能分化の可能性や、シロアリの生態に与えている影響について考察した。