| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-215

ネバダオオシロアリの生殖虫は栄養交換によってソルジャー分化を調節する

*中村早寿, 前川清人(富山大院・理工)

カースト分化と分業は社会性昆虫の特徴であり、タスクに特化した各カーストが協働することで巣全体の生産性を高めている。高度な社会性を維持する上では、巣内のカースト比を一定に調節することが重要である。シロアリのほぼ全種で、防衛を担うソルジャーが存在するが、分化の調節機構は未だ不明である。雌雄の生殖虫による創設直後の初期巣は、各巣でほぼ同時期にソルジャーが1~数匹分化するため、ソルジャー分化への生殖虫の影響の観察に適している。そこで本研究は,実験室内でネバダオオシロアリの初期巣を作製し、以下の実験を行った。

まず,マーキングによる個体識別で、どの幼虫がソルジャーに分化するのかを調べた(n=22)。その結果、全巣で最初に3齢に脱皮した幼虫だけが、7.3±0.8日(平均±SD)でプレソルジャー(ソルジャーの前段階)へ分化した。また、最初の3齢幼虫を脱皮直後に除去すると、多くの巣において、後に3齢に脱皮した幼虫が、9.3±1.3日でプレソルジャーに分化した(n=9/11)。次に、生殖虫の影響を調べるため,最初の3齢幼虫の出現後に生殖虫を除去した(n≧7)。その結果、3齢幼虫がプレソルジャーになるまでの期間が約1日延びた。最後に、ソルジャー分化に影響する生殖虫の行動を明らかにするため、3齢幼虫の出現からプレソルジャー分化まで、生殖虫と幼虫間の行動を観察した(n=8, 120分/日)。その結果、最初の3齢幼虫は、後に出現した3齢幼虫(プレソルジャーには分化しない)より生殖虫の肛門からの栄養交換を顕著に多く受けていた。以上より、初期巣の生殖虫は、栄養交換行動を介し、3齢幼虫からのソルジャー分化を調節することが強く示唆される。 生殖虫の腸内容物をより詳細に分析した結果も報告する予定である。


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