| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-216

ヤエヤマシロアリ野外コロニーの生殖虫組成の違いと、カスト比・性比・遺伝構造

*星 真大(茨城大学・院・理工), 北出 理(茨城大学・理)

シロアリのコロニーは、ワーカー、ソルジャー、ニンフ、生殖虫(一次生殖虫・ニンフ型生殖虫・ワーカー型生殖虫)など、異なるカスト(階級)の血縁個体で構成される。これまで、カストの組成には季節的な要因やコロニーの発達段階等の環境要因が影響を与えるとされてきた。一方で、最近ヤマトシロアリ属4種で、親生殖虫のカスト(一次・ニンフ型・ワーカー型)が子のカスト(ワーカー・ニンフ)分化に強く影響し、これがX染色体上の遺伝子座の遺伝子型によるものであることが実験条件下で示された。これは野外でも生殖虫組成が性比やカスト比に影響を与える可能性を示唆する。

本研究では、自然条件下で生殖虫組成がカスト構成、性比、遺伝構造に影響を及ぼすかどうかを明らかにするため、遺伝的カスト決定機構が確認されたヤエヤマシロアリの野外コロニーの調査を西表島で行なった。34の営巣材を2008年、2009年、2010年の3月に採集し、(1)総個体数、(2)生殖虫組成、(3)カスト構成、(4)ワーカー、ソルジャー、ニンフの性比、(5)遺伝構造を調査した。

巣内にみられた個体数は、約1000~55000と幅があった。生殖虫組成は、一次生殖虫ペア、一次生殖虫ペアとワーカー型生殖虫、雄一次生殖虫とニンフ型生殖虫とワーカー型生殖虫、ニンフ型生殖虫とワーカー型生殖虫、ワーカー型生殖虫のみの5型がみられ、腹部が肥大したワーカー型・ニンフ型生殖虫も確認された。ワーカーとソルジャーは全てのコロニーで得られたが、ニンフ、幼虫は一部のコロニーでは得られなかった。多くのコロニーで、ワーカー、ソルジャー、ニンフの性比はほぼ1:1であったが、いくつかのコロニーでは極端に偏った性比が確認された。8コロニーに対しては、マイクロサテライトマーカーを用いて遺伝構造を調べた。

これらの結果に基づいて、生殖虫組成とカスト構成、性比、遺伝構造の関係について考察する。


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