| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-217

沖縄産ハダカアリ属の生態~環境に応じた巣づくり~

*吉澤樹理(岐大院・昆虫生態), 山内克典(岐阜大学名誉教授), 土田浩治(岐大・応用生物)

日本に5種生息しているハダカアリCardiocondyla属のうち沖縄本島には4種が生息している(Japanese Ant Image Database, 2008)。営巣場所は大きく2パターンに分けられ、キイロハダカアリとウスキイロハダカアリは茎・枝中に営巣し、ハダカアリとヒメハダカアリは草地や裸地の土中に営巣することが知られている。しかし、野外における詳細な生態調査はされておらず不明な点が多い。2004年~2010年夏季にかけて沖縄県北部(本部半島)を中心に土中に生息するハダカアリC. kagutsuchiとヒメハダカアリC. minutiorの営巣場所や巣室数などを詳しく調査した結果、以下のことが明らかになった。

1)52地点を調査した結果、2種の営巣場所は、砂利・草地・赤土の3パターンに分けられた。2)ハダカアリの巣室数は、砂利で2.8±1.3個、草地で3.3±0.5個、赤土で1.2±0.4個、ヒメハダカアリでは、砂利で2±1個、草地で3.5±0.5個、赤土で1.1±0.5個であった。3)ハダカアリの最小巣間距離は、砂利で139.4±50.1 cm、草地で203.3±30.5 cm、赤土で33.5±33.5 cm、ヒメハダカアリでは、砂利で130.3±21.5 cm、草地で126.5±34.7 cm、赤土で49.7±30.8 cmであった。4)コロニーサイズは、両種ともに草地>砂利>赤土であった。

沖縄県北部の夏季は短時間に激しい降雨があり、赤土に営巣するハダカアリやヒメハダカアリの巣は破壊されるなど草地や砂利に比べると生息環境は安定しない。沖縄産ハダカアリとヒメハダカアリの巣室数や巣間距離は、営巣場所の環境に影響を受けることが示唆された。


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