| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-260
【はじめに】多くの外来植物は、改良農耕地など土壌pHが中性域に矯正され比較的富栄養な土壌環境に有利に生育できるのに対し、多くの在来植物は、酸性土壌域かつ貧栄養な土壌環境で有利に生育すると考えられる。本研究では、外来植物が蔓延している場所に酸性化資材を処理し、その後一年間の植生推移を報告する。
【方法】試験地は、セイタカカワダチソウが優占する山口大学農学部附属農場内の放棄果樹園地であり、土壌酸性化資材の投入量は、置換酸度が5となる土層の厚さが5cmの半量区と10cmの全量区、および無処理区を各5試験区(2m×2m)、合計15区設定した。試験地は、2009年夏に一旦刈取り、植物体を持ち出した後、土壌酸性化資材を投入した。また、刈取り前に1回、刈取り後に5回植生調査を行った。
【結果と考察】半量区および全量区では、処理166日後まで無処理区と比較して被度が低かった。しかし、処理166日以降から植生は徐々に回復し、半量区では処理310日後に、全量区でも処理406日後に無処理区とほぼ同程度の被度まで回復した。無処理区の優占種は、処理406日後も刈取前と同じセイタカアワダチソウであった。一方、全量区におけるセイタカアワダチソウの被度は406日後でも2%以下に抑制されていた。また、全量区では処理前より在来種の割合が高くなり、他の区と比較して出現種数も増加していることから多様性が高く、より望ましい植生になったと考えられた。したがって、本土壌環境制御法は、セイタカアワダチソウなど外来種が蔓延している場所を在来植生に置き換え復元するのに有効な手法と考えられる。