| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-264
人間の管理の下で成立する半自然草原は、草地性生物の重要な生息地であるが、管理放棄や開発などにより面積が減少している。カヤネズミ(Micromys minutus)は日本で数少ない草地性哺乳類である。現在草地の減少により、27都府県のレッドデータブックに記載されており、生息地の保全が必要である。カヤネズミの営巣は草地管理の影響を受けることが明らかにされているが、研究事例は十分ではない。本研究ではカヤネズミの営巣に与える影響が小さい、半自然草原の管理方法を明らかにするため、草刈り回数と営巣の関係を調査した。また半自然草原保全の現状と課題を把握するため、モニタリングサイト1000カヤネズミ調査の参加サイト対象にアンケートとヒアリングによる調査を行った。
(調査1)多摩丘陵(東京都、神奈川県)の谷戸に存在する半自然草原を調査対象地とした。草刈り回数が年0~3回の調査区を設定し営巣調査を行った結果、年1回草刈りを行った調査区での営巣数が多かった。群落高90cm以下の調査区では営巣が確認されなかったことから、年2回以上草刈りを行った調査区では、群落高が高くなる期間が短かったため営巣数が少なくなったと考えられる。
(調査2)モニタリングサイト1000カヤネズミ調査の参加サイトを対象とし、アンケートとヒアリングを行った結果、各サイトにおけるカヤネズミ生息草地管理の課題として、1)草地保全計画の未整備、2)調査者と管理者の連携不足、3)管理者のカヤネズミ生息草地保全意識の低さ、4)管理者の目的とする草地とカヤネズミ生息草地の対立、5)管理者の不足などがあげられた。