| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-266
京都議定書において、日本は炭素排出量の削減目標のうち、3.9%を森林の吸収量に期待しており、地域ごとの生態系の特性を考慮した炭素量の推定と将来予測が求められている。一方、近年、森林管理においては、収穫(伐採)と生態系の保全を両立させるため、非皆伐の施業方法が注目されている。そこで、本研究では天然生針広混交林の択伐施業地を対象として、生態系全体の炭素貯留量の過去30年間の長期的な変動を定量化することを目的とした。まず、炭素貯留量の空間分布が、上層木の状態(閉鎖林冠-ギャップ、樹種、樹高)と地形によって決まると仮定し、面積6.7haの調査地(北大中川研究林)内を14の状態カテゴリー(20m×20mスケール)に分類した。測定対象の項目は、上層木(胸高直径≧125mm)、下層木(胸高直径<125mm)、枯死木(直径≧5mm)、下層植生、リター、根系(直径≧0.5mm)、土壌(深さ0.3mまで)である。上層木および下層木に関しては、胸高直径の計測値から既知のアロメトリー関係をもとに、その他の項目については、14の状態カテゴリーに分類された地点それぞれ3箇所で行なったサンプリングの分析結果をもとに炭素量を推定した。また、過去の毎木調査データ(1974年から約10年ごと)、および空中写真、航空機ライダー測量から推定した林冠高データを用いて、過去の生態系全体の炭素貯留量を推定した。今回の発表では、上層木の炭素貯留量を中心に、これまでに得られた結果を報告する。