| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-278

都市域のランドスケープ構造がチョウ類の分布に与える影響

*前角達彦,須田真一(東大院・農),角谷拓(国環研),鷲谷いづみ(東大院・農)

都市化は、生息地の改変や分断化によって生物相に影響を及ぼし、外来種の優占やその単純化をもたらす。最近では、自然との触れ合いの機会の確保という点から、人口の集中する都市の生物多様性の保全の重要性が認識されるようになった。チョウ類は公園緑地や人家の庭を生息場所として利用するため、都市においても多くの種が観察される。しかし、都市のランドスケープ構造がチョウ類の生息に及ぼす影響は十分には解明されていない。本研究では、東京都世田谷区、杉並区、練馬区の3区において、2001年以降に市民科学者により採集・目撃されたチョウ類の記録を用い、チョウ類の生息環境と関連する土地利用パターンが種ごとの分布状況に与える影響を評価した。

解析では、対象地を3次メッシュによるグリッドに分け、各グリッドにおける5タイプの土地利用(樹林、畑地、水域、公園緑地、樹木に囲まれた居住地)の面積率を求めた。さらに、1×1,3×3,5×5グリッドの3段階のスケールにおいてMaximum Entropy Modeling(Maxentモデル)を用い、種ごとの出現確率と各土地利用の面積率との対応を評価した。

対象地において10グリッド以上で目撃された34種について解析を行った結果、ジャコウアゲハなど草本食の種で水域面積の増加に伴い分布確率が上昇する傾向が認められた。これは、水域では河畔などに湿性の草本群落を伴うためと考えられる。また、都市的土地利用である公園緑地と樹木に囲まれた居住地は、解析するスケールの拡大に伴って、分布確率の対応が正から負に変化した。局所レベルでは、これらの土地利用が生息場所を提供する種もあるのに対して、より広範なスケールでは、これらの占める面積が大きいことは周囲の市街地の面積が大きく、樹林や畑地、水域面積の割合が小さいことを表し、市街地の負の効果が他の土地利用の効果を上回ると解釈される。


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