| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-279
都市環境でも、そこに生息している哺乳類たちがいる。例えば、都心のタヌキは有名な事例である。一方で、都市にはアライグマなどの外来哺乳類も生息している。どのような特性を持った哺乳類が都市環境に適応しているのか明らかにすることは、基礎科学として重要であると同時に、在来哺乳類の保全・管理や外来哺乳類のリスクマネジメントの面からも重要である。本研究では、哺乳類が都市環境に適応するために重要な生態的特性を明らかにすることを目的とした。
調査は多摩丘陵と房総半島でおこなった。多摩丘陵の東西と房総半島の南北を都市化傾度と考え、その傾度の中でそれぞれ4個、6個のグリッド(約5km2)を設置し、センサーカメラ調査をおこなった。調査期間は2009年9月から2010年10月までとした。この調査の結果、ネズミ類を除く13種の哺乳類を確認した。都市化傾度を定量化するために、調査地点周辺の土地利用割合を算出し、主成分分析を用いて都市化傾度に関する軸を抽出した。この値を使って調査グリッドの中から、「都市グリッド」を選択し、これを解析対象グリッドとした。各都市グリッドに種が出現したかどうかを目的変数、体重や食性、繁殖特性(産仔数)、行動特性(樹上および巣穴の利用)を説明変数としたロジスティック回帰をおこない、都市環境に生息するために重要な生態的特性を解析した。
その結果、哺乳類が都市環境に生息するためには、産仔数が多く、雑食性であることが重要であった。また、体サイズが小さいことや、樹上を利用できることも重要な要因である可能性が示唆された。