| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-HS09
CO2の増加による地球温暖化や人間活動による生物多様性の危機が問題となっている。このような地球環境問題に対して森林の役割を明らかにすることを目指した。方法は、人工林および遷移段階が異なる森林で、樹高・直径・樹齢を5年間調査し、そのデータから樹木による1年当たりのCO2吸収量を求め、さらに樹木の種多様性や森林の構造との関係を解析した。
結果は、CO2吸収量は、1年間で人工林では100m2当たり140kg、天然林では100m2あたり260kgになった。天然林は人工林と比べて、樹種の多様性が高く、樹高の高低に大きく差がある複雑な階層構造を示した。その結果、光合成を効率よく行ってCO2吸収量が多くなったと考えられる。また、アカマツは他の樹木と比べてCO2吸収量が高いことがわかった。これは、直径や樹高の成長量が大きいためCO2吸収量も多くなったと考えられる。
結論として、天然林は人工林に比べてCO2吸収量が多いことがわかった。日本人1人が1年で家庭で排出するCO2は約2.0tなので、人工林100m2で処理できるのは約0.07人分、天然林でも約0.13人分にしかならない。CO2の急激な増加が環境問題になっているが、その解決には、自然度の高い森林生態系を守っていくとともに、私たち自らがCO2の排出を抑制する生活に変えていく必要がある。