| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S01-4

陸域相利系における発見が水域群集に適用されるとき:群集ネスト構造をめぐる発見と迷走

近藤倫生(龍谷大)

ネスト構造は、当初、陸域生態系に特有な「送粉・種子散布系」において発見された(Bascompte et al. 2003)ネットワーク構造である。その後、陸上における「アリ-花外蜜腺保有植物系」のみならず、海域における「掃除魚群集」や「イソギンチャク共生系」等においても同様の構造が発見されることで、相利系一般に特有の構造と考えられるようになった。これを受けて、ネスト構造が相利系ネットワークで生じるメカニズムに関する仮説や、ネスト構造が相利系の動態に及ぼす影響に関する研究が熱心に行われた。さらには、捕食-被食関係においては、ネスト構造が生じにくい理由が「説明」されるようになる。だが、最近の研究から、陸域・水域の区別を問わず食物網にも同様のネスト構造がみられることがわかった(Kondoh et al. 2010)。過去に提案された相利ネットワークにおけるネスト構造成立の理論の前提、すなわちネスト構造は相利系に特有の構造であるという前提が崩れたいま、私たちは群集ネットワークにおけるネスト構造の意味をもう一度考え直す必要があるだろう。ここでは、ネスト構造の発見とその生態学的説明をめぐる研究をレビューすることで、陸域-水域研究の相互作用、理論の一般化等に関してどのような「教訓」が得られるか考えたい。


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