| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S05-4

敗北経験と意思決定

岡田賢祐(岡大・環境)

動物は餌や配偶相手などの限られた資源をめぐり争う。一般に、この戦いの勝敗は個体のサイズやその資源に先に居た効果(先住者効果)などに左右される。加えて、個体はその生涯でいくつかの戦いを経験し、その闘争経験が次の戦いに影響することがある。古くから、勝利を経験した個体は次の戦いの勝率が上がり、敗北した場合はその逆になることが、多くの分類群で報告されている。近年、この現象について二つの仮説が提案された(ただし、両者は排他的ではない):1つは、個体が闘争経験を基に自身の行動を変える(self-assessment hypothesis);もう一方は、匂いなどの手がかりから、個体が対戦相手の闘争経験を判断し、行動を変える(social-cue hypothesis)。具体例を挙げると、前者は記憶や学習による行動の修飾であり、後者は対戦相手の過去の闘争による外傷や出血によって、個体が行動を変えることである。いずれにしても、闘争経験は個体の意思決定に重要な役割を持つ。ここでは、オオツノコクヌストモドキのオスを例として、闘争経験がどのようにオスの闘争行動や交尾行動の意思決定に影響するかを報告する。本種のオスはメスを巡り争う。勝利経験は次の対戦の勝率に影響を及ぼさないが、敗北経験から4日間、オスの勝率は0%近くまで下がることが分かっている。本研究では、最初に勝利経験と敗北経験がどのようにオスの行動に影響を及ぼすのか、さらになぜ敗北経験による行動の修飾時間が4日間なのかを調べた。得られた結果から、闘争経験がオスの行動の意思決定にどのような役割を持つかを議論する。


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