| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
シンポジウム S08-1
日本列島は,他の「先進国」に比べ高い森林率や高い生物多様性を保持している。稠密な人口を擁するにもかかわらず,なぜ日本列島の生物多様性は失われなかったのか?最近の「里山」イメージをはじめとして、縄文時代や江戸時代に「自然と人間の共生」の理想を求める言説は多い。この企画では、1)日本列島の生物多様性が高かった要因を主に地理的,気候的,地史的側面からの仮説を示し,2)列島各地の歴史から見出した生物資源利用とその管理の成功/失敗事例を紹介し,3)列島の生物多様性が維持された要因を整理した上で, 4)今後の「自然と人間の関係」をどうしていくのかを展望したい。
2010年の生物多様性条約締結国会議COP10の名古屋議定書の内容にも、先住民が生物資源を認識し、持続的な利用を行っていたことから生じる権利が改めて強調されている。このように世界の流れは、生物多様性のみを保全するのではなく,人間との関係性も含めて保全していくという方向に動きつつある。生態学と同じ「関係性」の学問である歴史学の視点に触れ,生物多様性と分かちがたく結びついている文化多様性について考えたい。