| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
シンポジウム S13-1
進化生物学において、どのような機構が適応進化を制限しているのかという問題に近年注目が集められている。Futuyma (2010)は、過去50年間の進化生物学における最も重要な転換は、適応の失敗や適応が制限されていることの重要性の認識が増大したことだと述べている。気候変動などの急激な近年の地球環境に対応して一部の生物は急速に進化的変化が生じているのに対し、他の生物では進化的反応が妨げられているのはなぜか。多くの生物で生息分布外への進化的適応によって分布を拡大することができないのはなぜか。また、いくつの生物でみられるように系統的に近縁の種間では、ニッチが変化せず、長期にわたって保存されているのはなぜか。これら適応を制限する自然免疫要因を解明することは、進化生物学の問題のみならず、生物多様性を決定する要因の解明、また、地球環境変動における生物多様性の保全研究にも寄与する。また、一方で、近年、生物の持つゲノム構造や遺伝子ネットワーク構造が、遺伝的変異創出と関係している可能性も指摘され、生物種の持つ遺伝子システムと進化しやすさ(evolvablity)との関係が注目されている。このように、適応を制限する要因を解明する研究は、ゲノム研究から生物多様性研究へとつながる重要なテーマである。
本発表では、以下の項目について考察することにより、本シンポジウムの導入としたい。
(1) 適応はどのように短期的・長期的に制限されているのか
(1) 適応進化を制限する要因として考えられる遺伝的機構
(2) 適応を制限する要因としての遺伝子流動
(3) 適応進化に関わる遺伝的変異の創出を制限あるいは促進する遺伝システム
(4) 急激な環境変化への適応が制限あるいは促進されることによる生物多様性への影響
(5) 進化が制限されることによる生物多様性への影響