| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S16-7

生物多様性保全に向けた地域活動の推進手法

*阿辺一郎,平田弘成(農林水産省農村振興局)

生物多様性保全に向けた地域活動の推進手法

農林水産省農村振興局農村環境課 阿辺一郎、平田弘成

要  旨

我が国の農地生態系は、農地の利用管理の縮小や外来生物の増加などを主な要因として、その生物多様性が大きく損なわれつつあることが懸念されている。本来、我が国農村の豊かな生物多様性は、農業等の人間活動と自然の調和によって成り立ってきた。このため、農地生態系の生物多様性の再生には、地域の人と自然とのつながりを再構築することが重要である。

地域の人と自然とのつながりは、地域の多様な主体による「地域の生物多様性を知る-理解する-守る」の3つのプロセスの実践が必要である。農林水産省では、「田んぼの生きもの調査」によって農村地域の生物調査を推進し、地域の保全意識を啓発してきた。また、環境省のモニタリング1000や国土交通省の河川水辺の国勢調査など、様々な機関において地域の自然環境の調査が行われている。しかし、近年では、「生物多様性を知る」ことに重きをおいた既存の取組に加え、これまで醸成してきた地域の保全意識を保全活動へ昇華させる手法が必要となっている。

このため、農林水産省では、「地域の生物多様性を知る-理解する-守る」を提供する「農村地域の生物多様性把握・保全手法」を検討している。本手法では、生物調査の手順のほか、地域住民自らが生物多様性の状況を評価・理解する手法や、地域住民の手によって実施可能な保全対策を盛り込み、これらを有機的に結び付けて一連のプロセスとして整理している。また、地域の主体が興味関心を持ちやすい「生態系サービスをもたらす生物」を含めたことも特徴的である。さらに、本手法の検討では、全国の農村地域の多様な主体の参画を得た実証調査を行っており、実際の利用者の目線に基づく手法の開発を重視している。

本発表では、現在までの検討状況と今後の地域の保全活動を促すポイントについて紹介する。


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