| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
企画集会 T06-3
ドイツ(ドイツ連邦共和国:旧西ドイツ)は東西ドイツ統一以前から種の保護と同時に生態系の保護を国レベルで行ってきた。統一後も国内全域にこの保護体系を布いている。実際、国内には多種多様な自然保護の法制度とその指定地があり、一見混乱した環境行政のようにみえるが、実は各保護制度はその目的を果たすことを第一義とし、その目的が果たせる場所であれば何重にも指定されことを妨げないようになっている。確かに、自然保護区としての国立公園(アメリカ合衆国と同様な概念)と文化的系景観を含むエコパーク(ユネスコ生物圏保護区)が同一の場所に設定されていることに違和感をおぼえる人もいる。しかし、これを生物多様性の立場からみると、国立公園の中核部は自然度の高い生態系であり、同時にエコパークのコア(核)の部分であるとすれば、この保護区のゾーニングは一致し、したがって管理に関してもそれぞれの地区に一貫した施策を展開することができる。このように多重であっても整合していて、ゾーニングにおいても矛盾をきたさないのは、実は単一化された要素主義によるものである。確かに、要素主義では相対立する評価が生まれたりすることもあるが、これを乗り切るのは経験主義であり、試行錯誤でもある。今回のエコパークに関する研究集会では、演者は先進国の事例が担当ではあるが、エコパークを上手に環境保全に活用している点に注目して、以下の3点に結論を要約して発表する。
1.自然保護制度の中におけるエコパークの機能の総括。
2.エコパーク内の問題の解決に係る経験主義的手法の紹介(2件の事例を挙げる)。
3.政府が優先課題に挙げている生育地保護の視点からの文化的景観の保護の内容。