| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
企画集会 T24-2
北海道における鳥類の風車への衝突事故は、これまでに少なくとも21種を含む83個体で確認され(ニムオロ研究会(2004)、北海道鳥類保全研究会(未発表)、環境省発表資料)、このうちもっとも報告の多いのがオジロワシで、2004年以降23個体が確認されている。これらの死体の発見時の状況には、研究者や事業者による死体探索調査中、施設の保守点検作業中、偶発的な場合、が含まれる。本発表では、発見者への聞き取り調査、環境省資料および現場検証により得た情報から、オジロワシの衝突事故の発生状況について整理し、その特徴について紹介するとともに、事故報告が最も多い苫前町において行っている現地調査の結果やヨーロッパにおける研究事例などから、風車に対するオジロワシの脾弱性について検討する。
一方、日本国内においては、オジロワシ以外の希少種ではイヌワシの一例やハイタカ、ミサゴなどで少数の報告があるが、普通種を含め同一種における多数個体の衝突死は報告されていない。そのせいもあってか、鳥類研究者の間でもこの問題が取り上げられることはあまりなかった。しかし、事後調査の不足により影響が明らかになっていないだけかもしれないし、近い将来、山岳域や洋上を含めたさまざまな鳥類のハビタットに風車が増設される可能性もあることから、第二、第三のオジロワシが出てくる可能性もある。今後、鳥類への悪影響を回避するために風力発電施設建設においてどのような対応がとられるべきか、オジロワシの事例も踏まえてこの課題を検討したい。