| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T24-3

洋上風力発電が鳥類にもたらす影響

風間 健太郎(名城大・農)

近年、陸上の建設適地の不足や発電効率の良さから、大規模な洋上風力発電施設(以下、洋上風発)が世界中に建設されている。洋上風発は、効率的に電気エネルギーを生産できる一方で、海鳥や渡り鳥の生残や行動に様々な悪影響をおよぼす。洋上風発の建設により、海鳥の休息や採餌環境は直接的に削減されるばかりでなく、埋め立て基礎工事により海流が変化し、海鳥の餌生物資源量を変動させてしまうこともある。また、洋上の風車と鳥が衝突する事故は多数確認されており、とくに海鳥の集団繁殖地付近や、鳥が低空を飛翔する悪天候時や夜間に頻発する。風車との衝突を避けるために、多くの鳥が採餌や渡りの際に風車を避けて飛翔していることが、レーダーによる調査から明らかとなっている。近年では、風車を避けるために最短移動ルートの飛翔が制限された(迂回を余儀なくされた)場合の採餌効率や、飛翔エネルギーコストが計算されている。その計算によると、迂回飛翔はウやヒメウ類でとくに大きな採餌効率の低下や飛翔エネルギーの増大をもたらすことが明らかとなった。こうした採餌効率の低下やエネルギー消費量の増大は、個体の生残率や繁殖成功率を潜在的に低下させると懸念されている。これら洋上風発が鳥類にもたらす悪影響を軽減するために、渡りの重要ルート(海域)や海鳥繁殖地周辺を避けた建設に加え、鳥が視覚感受しやすい風車のデザイン、および鳥の飛翔行動や洋上分布に配慮した風車の配列が求められている。


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