| 要旨トップ | ESJ58 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
自由集会 W17 -- 3月9日 18:00−20:00 H 会場
2010年7月、ユネスコ視察団の査察をへて、小笠原諸島は世界自然遺産登録へ最終段階に入った。小笠原は世界に誇る自然を持ちながら、同時に多くの外来種問題をかかえ、世界遺産登録への最大の課題ともなっている。これまで多くの外来種対策や重要地域の保存等の担保措置が進んできた。今や、生態系コア地域に立ち入りを許されるのは、許可を得た研究者や外来種対策の事業者のみとなった。
世界自然遺産登録のための保全施策において、地域でとるべき方向性を助言してきたのは、他ならぬ研究者であった。自らの助言に対して、研究者自身もその責任を問われることになるという状況を、2009年盛岡自由集会(研究者の社会的責任part1)において専門的助言の「ブーメラン」現象と呼び、研究者自らの社会的責任について問題提起した。さらに、2010年東京自由集会では、保全事業が急激に進む中でおこった予想外の課題について議論した。
予想外の課題に対処するには、そうした事態も想定した包括的なモニタリングによって、リアルタイムに現状を把握し、その結果を迅速にしかも適切に保全の現場にフィードバックすることが不可欠である。この自由集会では、研究者自身の外来種拡散防止を目的とする、MLを使った「アップデート型のリスクカルテ・プラットフォーム」の取り組みを紹介し、人類共通の財産となる世界遺産コア地域に入り続ける研究者に求められる社会的責任の「見える化」について議論する。小笠原にかぎらず、野外研究活動が自然の価値を損なう可能性について関心をもつ研究者・関係者の参加を期待する。