| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-01 (Oral presentation)

森林の葉量の林分発達に伴う変化の解析

名大(生命農学)

林分葉量の林分発達に伴う変化が、パイプモデル理論、すなわち林木個体葉量が生枝下高幹断面積に比例すると言うことを前提に、数学的に解析された。実際、この関係はヒノキ林木個体葉量と生枝下高幹断面積との関係において確認されている(Ogawa et al. 2010)。

本研究においては、まず第一に林分密度モデルとして、林分密度の林分発達に伴う変化がロジスチック曲線に従うと仮定された。実際に、林分密度の年変化は、スギ(23年生〜44年生)およびヒノキ(3年生〜13年生)の各人工林でロジスチック曲線に従うことが認められた。

さらに、第2に林分葉量モデルとして2つのモデル(I, II)が考えられた。モデルIでは、林分を構成する個体の平均葉量の成長曲線は単一のロジスチック曲線で表現され、個体の平均葉量と林分密度との積で定義される森林の林分葉量は一つのピークをもつ一山型の変化を示した。この変化を示すモデルIはRyan et al. (1997, 2004)によって提案された仮説的傾向に対応した。

モデルIIでは林分を構成する個体の平均葉量が複数のロジスチック曲線で示され、成長曲線の乗り換え(Hozumi 1985, 1987)が起こっているとすると、林分葉量の変化は、最初の一時的なピーク後、多かれ少なかれほぼ一定値を維持することが実現された。林分葉量の一定性は葉の物質密度の一定性に関するシュートレベルから林分レベルへの数学的スケーリングアップによっても支持されている(Ogawa 2008)。このモデルIIはKira and Shidei (1967)やOdum (1969)の提案する仮説的傾向に対応した。


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