| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-03 (Oral presentation)

四国地方のヒノキ林における間伐後の林分構造と一次生産力

宮本和樹,稲垣善之,奥田史郎,野口麻穂子,伊藤武治

本研究は、ヒノキ人工林において近年実施されている強度な間伐(過密な林分に対して実施する本数間伐率40%以上の間伐)の残存木への影響を明らかにするため、間伐後の林分構造と一次生産力を林分レベルおよび個体レベルで比較した。調査は、高知県内の高標高域(850-970m)と低標高域(320-370m)に位置するヒノキ人工林を対象として実施した。2008年の生育期間の始めまでに間伐した試験地で、2007年に異なる間伐処理区(本数間伐率約50-70%)と無間伐区にそれぞれ調査用プロット(20m×20m)を設け、プロットあたり5基のリタートラップを設置し、約2か月毎にリターを回収した。間伐直後の2008年における林分の地上部純生産速度(ANPP)は 高標高の奥大野で4.3-7.5Mg ha-1 yr-1、低標高の辛川で3.8-6.8Mg ha-1 yr-1となった。標高の違いによる林分のANPPの顕著な差はみられなかった。また、間伐による立木の本数密度の減少を反映して林分のANPPは間伐強度が高いほど小さくなった。一方、林分ANPPを本数密度で割った個体あたりのANPPは間伐強度が高いほど大きくなった。個体あたりのANPPは間伐の有無や間伐率によらず土壌のCN比との間に有意な負の相関が認められ、土壌窒素利用環境の良好な林分ほどヒノキの個体あたりの一次生産力が高いことが示唆された。本研究の試験地では、本数間伐率50%を超える強度の間伐を行った場合でも、水ストレスなど残存木に著しい成長抑制はみられず、間伐後の残存木は順調に成長していた。さらに、間伐から2年目以降の成長パターンを含め、間伐後の林分構造と一次生産力の変化、およびその要因を考察する。


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