| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-04 (Oral presentation)

コナラ二次林の土壌微生物呼吸量の推定

*新谷涼介(龍谷大・理),嶋田裕介(),宮浦富保(龍谷大・理)

コナラ二次林の土壌微生物呼吸量の推定

新谷涼介(龍谷大・理)、嶋田裕介()、宮浦富保(龍谷大・理)

生態系純生産(NEP)は、純生産量(Pn)と土壌呼吸量(SR)中に含まれる従属栄養生物によるCO2放出量(HR)との差で定義される。しかしSR中から植物根の呼吸量(Rr)を分離し,HRのみを測定する方法はいまだ確立されたといえる状況ではない。本研究では、滋賀県南部の瀬田丘陵にある龍谷の森(38ha)コナラ二次林内においてHRの測定方法を考案し、NEPを推定することを目的とした。

コナラ二次林内に、中心区画50cm×50cm=250㎡を残して周囲に幅30cm,深さ40cmの溝を土壌に掘り、防根透水シートを敷き詰めた上で土壌を埋め戻すことで、植物根の除去エリアを作成した。これをHR-siteと呼んだ。HR-siteの内側と外側で、土壌表面からのCO2放出量を測定した。また、周囲の樹木に関して、毎木調査とリターフォールの採集を行い、積み上げ法を用いてPnを推定した。

結果、コナラ二次林における年間総SR量は9.0tC・ha-1・yr-1、年間総HR量は6.2tC・ha-1・yr-1となった。この結果から、SR中のHRは約7割であるとわかった。毎木調査、リターフォール測定により算出したPnは6.4tC・ha-1・yr-1であった。PnからHRを差し引いた結果、コナラ二次林におけるNEPは0.2tC・ha-1・yr-1となり、プラスの値を示した。龍谷の森コナラ二次林はCO2の吸収源になっている林であると言える。この研究により、SR中に含まれるHRを分離して測定することが可能になった。しかし植物根の除去を行った事で、土壌中の微生物の活動に影響を及ぼしている可能性がある。より正確にNEPを算出するには、土壌微生物への影響の少ない測定法を開発し、HRの測定精度を上げる必要がある。


日本生態学会