| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-06 (Oral presentation)

リター堆積が種子サイズの異なる湿原植物4種のシードバンク持続性に与える影響

*江川知花, 露崎史朗 (北大・環境科学院)

シードバンクの持続性は、植物個体群存続期間の規定要因である。埋土種子の寿命は、種子が位置する深度と強く関連している。一般に、小さな種子の種は永続的な、大きな種子の種は一時的なシードバンクを形成する傾向があり、種子が長期間生存可能な深さと、実際の埋土深は、種子サイズによって大きく異なることが予想される。遷移の進行とともに増加するリターは、地表での種子移動および光・温度条件を大きく変化させる。そこで、種子サイズの異なる湿原植物4種を用い、リター堆積に伴う種子の生存・埋土パターンとシードバンク持続性の変化を検証した。

モウセンゴケ(種子重0.01mg)、サワギキョウ(0.25mg)、ミカヅキグサ(0.87mg)、ヌマガヤ(1.82mg)を用いた。北海道サロベツ湿原泥炭採掘跡地内のリター堆積量の異なる3サイト(裸地・リター厚4cm・10cm)において、4種の種子をリター中・地表面・地中4cmに埋め、1年後の種子生存率を比較した。また、各種の種子を着色後に散布し、種子移動パターンを調べた。

1年後の種子生存率は、全種でリターの増加とともに上昇した。裸地では、地表面での生存率はどの種も5%以下であったが、リター厚10cmのサイトでは、リター被覆下の地表面での生存率はヌマガヤ40%、他3種70%以上であった。裸地では着色種子のほとんどが埋土せずに移出したが、リター増加に伴い、種子の滞留率が上昇した。大きな種子はリター中に滞留し続けるのに対し、小さな種子はリター中に滞留した後、雪解けまでにその一部が地表面へ到達していた。以上より、①リターはシードバンク形成を促進する効果をもち、リター堆積に伴い、いずれのサイズの種子もリター中に一時的なシードバンクを形成するようになる、②小さな種子はリター下の地表面に永続的なシードバンクを形成し、シードバンク持続性はリターの増加とともに増す、と結論した。


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