| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) A1-12 (Oral presentation)
中国では砂漠化が問題となっており、緑化活動が盛んに行われている。緑化には現地自生種で砂丘固定に効果的な灌木が用いられ、マメ科のC.korshinskiiもその一つである。しかし、これらの灌木種の寿命は高木種と比較して短く、緑化の持続性を評価するには種子繁殖による天然更新の可能性を知る必要がある。そこで本研究では中国内モンゴルの砂丘緑化地に植栽されたC.korshinskiiの成木周辺で、成木からの方角、距離毎に当年種子散布量、当年生実生の発生量、発生した実生の生存について調査を行い、C.korshinskiiを用いた緑化の持続性を評価した。
種子散布量、実生の発生量、環境条件のいずれも成木からの方角による偏りはなかった。散布種子の51%が樹冠縁に散布されており、樹冠縁から離れる程散布量は減少した。散布種子数あたりの実生発生数は樹冠縁で高かった。調査期間中に親個体の株元から50〜250cmの範囲で発生した実生数は1個体当たり平均117.3個体で、そのうち44.5%が調査終了まで生き残った。生き残った実生の割合は、樹冠縁と比べ樹冠外の方が高かった。これは株元に近いほど土壌含水率が低いためかも知れない。調査終了時に生存していた当年生の実生は成木1個体当たり52.1個体で、これは散布種子数の2.8%に相当した。以上から中国内モンゴルの砂丘緑化地において、C.korshinskiiの天然更新は可能であると考えられた。また調査地における降雨にともなう土壌水分の増減が、実生の発生•枯死のパターンと酷似していたことから、降雨は実生の発生と生残に非常に重要だということが示唆された。