| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) A2-15 (Oral presentation)
放置されたモウソウチク林(以下、竹林)を周辺広葉樹二次林の構成種による森林へ回復させることを目的として、3つの地域の竹林で間伐または皆伐を行い、跡地での高木性樹木の更新状況を比較した。今回は、伐採後2年間での出現状況と成長を調査した。伐採後1年目の相対照度は、間伐区11.9~27.3%、皆伐区61.7~85.1%であったのが、2年目にはそれぞれ10.5~22.4%と35.9~62.8%に低下した。皆伐区では、1年目にパイオニア樹種をはじめ多数の樹木が発生したのに対し、2年目では新に発生する樹木は少なかった。皆伐区の2年目では、伐採後に出現したカラスザンショウ・アカメガシワ・ネムノキなどのパイオニア樹種の成長が旺盛になる場合や、皆伐前から存在していたコナラやウワミズザクラなどの前生稚樹の成長が旺盛になる場合もあった。ただし、草本やつる類の繁茂が著しく樹木の成長や生存の妨げになっている場合や、急激な環境変化による乾燥害が原因と思われるシロダモやケヤキなどでの枯れもみられた。一方、間伐区では1年目からパイオニア樹種ばかりでなく二次林構成種も多数発生したのに続き、2年目でも二次林構成種のサクラ類、アベマキ、クマノミズキなどが多数発生する傾向がみられた。間伐区では、樹木の成長はそれほど旺盛ではなく、皆伐区に比べてパイオニア樹種が優占する割合は少なく、草本が優占する場合も少なかった。前生稚樹の少ない竹林では、皆伐はパイオニア樹種のほか草本やつる類の優占度を高める可能性が高いことから、二次林構成種を増加させるためには間伐の方が効果的と考えられた。これらのことから、放置竹林の森林化は、最初は間伐を行い、二次林構成種の前生稚樹が生え揃った後に皆伐を行う方法が有効と考えられた。