| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A2-17 (Oral presentation)

マレーシアでのSMS択伐施業が林分構造に与える評価:伐採率・林道密度と択伐後5年間の林冠木動態との関係

*上田 尭史(鹿児島大・農),米田 健(鹿児島大・農),Wan Rashidah Kadir (FRIM)

マレーシア山地部で現在採用されている択伐施業法(SMS)が、伐採後の残存林冠木の動態に与える影響を伐採率・林道密度を主要パラメーターとして解析する。林冠木の動態は、伐採後6年間の平均死亡率と6年目の樹木の健全度から評価した。 SMS方式により6年前に択伐されたパソ森林保護区の47-B林班で調査した。林班面積は43 ha,そのほぼ中央で、南北・東西方向に直交する長さ500m×幅30mのベルトトランセクト2本を2011年8月に設置し、胸高直径30cm以上の胸高直径と健全度を観測した。健全度は枝枯状態、葉量、主幹折れの有無等を目視により評価した。ベルトトランセクトの基線沿いに1m間隔で山中式土壌硬度計で表層土壌の硬度を測った。また、ベルトトランセクト内の林道、切株、生存木、枯死木の位置図を作成し、枯死木について立枯れ・幹折れ・根返り等の枯死状態も記録した。調査した2本のベルトトランセクトの伐採率は30%、胸高断面積合計(BA)=6.1m2/ha、立木密度(SD)=45/haであった。それらの値は、成熟林分内の50ha調査区の41%、59%に相当した。SMSのプロトコールにほぼ従って伐採された林分(A区)では,伐採率が21%で、BAは11 m2/haであったことから(先行研究)、当該ベルトトランセクトでは、かなり強度な伐採であったと推察できる。調査区内の林道密度は規定密度の約10倍と高く、それらの場所では、伐採後6年経過した時点においても平均硬度で非林道帯の2.5倍と高く、植生の回復も遅れていた。観測した枯死木が伐採後に発生したものと仮定すれば、年間の平均死亡率は3.6%で、A区の6.0%に比べ低かった。残存林冠木の健全度は、現在解析中であるがA区よりも健全な傾向が認められた。これらの観測結果をもとに、伐採率と林道密度を主要パラメーターとし択伐後6年間の林冠木動態を考察する。


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