| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) A2-21 (Oral presentation)
窒素・炭素同位体比は、遷移系列に伴う生態系プロセスの変化を理解する強力な手法である。しかし、寒帯林生態系の数百年にわたる遷移過程について同位体比の変化ほとんどわかっていない。我々は北スウェーデンの寒帯林の野火による361年の遷移系列において、8種の優占する植物(高木3種、低木3種、草本及びコケ)と土壌(腐植)を採集し、その窒素・炭素同位体比とC/N比を測定した。コケと共生するシアノバクテリアによる窒素固定が遷移過程に沿って上昇することがわかっている。そのため、我々は植物や土壌の窒素同位体比は大気の値に近づくという仮説を立てた。しかしながら、この仮説とは異なり、これら窒素同位体比は遷移過程に沿って大気の値とは離れた負の値を示した。また、炭素同位体比とC/N比は遷移に沿って上昇傾向を示し、窒素制限のために植物のストレスが高まったことを示唆している。これらの結果は、コケやその他の植物の窒素源としてシアノバクテリアによる窒素固定が重要な役割を果たしていないことを示唆している。また、窒素同位体比の結果は、遷移が進行するにつれて植物がその窒素源を菌根や大気性降下物に依存している可能性を示している。これらの結果は、寒帯林において野火が地上部や地下部の生態系プロセスに重要な影響を持つことを示している。