| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) B1-06 (Oral presentation)
東日本大震災の津波により、東北地方沿岸地域のマツを主とした防潮林が甚大な被害を受けた。四方を海に囲まれた我が国において、防潮林の減災効果に関する検討・再生は緊急の課題である。現在の防潮林の多くは植栽起源によるマツ林を主体としているが、今回の被害の大きさに鑑み、広葉樹の混植・活用について検討が進められている。沿岸地域の立地環境において持続的で健全な海岸防潮林を再生するためには、地域の自然条件に適応した樹種からなる樹林を再生することが必要と考えられた。筆者らは2011年5月~10月に青森県八戸市から福島県南相馬市にかけて沿岸地域に残存する広葉樹林や津波の被害を受けたマツ林について植物社会学的植生調査を実施し、種組成や構造または樹木個体の被害の程度、再生状況等を観察した。マツ林には下層に草本植物の優占する群落やシロダモ、ヤマザクラ、マサキ、トベラなど木本植物が残存する群落が認められた。高台の神社など土壌の堆積した立地では、タブノキ、ヤブツバキ、ネズミモチ、アオキ、ヒサカキなどによって構成された常緑広葉樹林が残存していた。常緑樹の中には、根元付近から多数萌芽するシラカシや多くの胴吹きを開始しているタブノキが観察された。土壌の薄い風衝地や急斜面ではケヤキ、エゾイタヤ、カシワ、カエデ類から成る夏緑広葉樹林が生育していた。森林再生計画地の立地条件、植栽基盤整備、利用目的等との対応を考慮し、自然度の高い森林群落等の中から森林再生のための樹種及びその組み合わせを検討することが一つの方向性と考えられた。なお、津波の影響を受けた樹木個体の中では、スギは枯損個体が多く観察された。常緑樹の中ではマサキ、トベラ、シロダモなどが残存していた。また、サクラ類、アジサイ、エノキ、ドウダンツツジなどでは展葉を開始している個体が観察された。