| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) B1-07 (Oral presentation)
2011年1月27日,新燃岳で爆発的噴火が発生し,火口南東側を中心に大量の火山灰が堆積した.本研究ではこの噴火による森林被害の解明を目的として,噴火後の2011年9月に火口から南東3km付近において50m四方のプロットを5ヶ所設置し,胸高直径5cm以上の樹木個体について樹種名,胸高直径,被害度を記録する毎木調査を行った.各プロットの胸高断面積合計は27.6~44.2m2/haであり,内訳はいずれもアカマツが50%前後を占めるアカマツ林であった.その他の主要樹種もネジキ,カナクギノキ,タンナサワフタギなど遷移早期に出現する低木~亜高木性の樹種が多かったことから,霧島連山における一連の噴火の影響下で成立した植生と考えられた.今回の噴火で最も被害が大きかった樹種はアカマツであり,プロット1では全てのアカマツが葉を全て落とす「衰退度5」と判定され,プロット2,3においても「衰退度5」のアカマツ個体が80%以上に達した.プロット内にアカマツの実生はほとんど見られないことから,優占樹種が交代する可能性が示唆された.それ以外の主要樹種ではカナクギノキ,アオハダ,リョウブの被害が比較的大きかったが,被害の程度は樹種間で違いが見られた.各プロットのアカマツの衰退度と全天写真で測定した開空度の関係は概ね比例していたことから,アカマツの枯死に伴い明るくなった林床で生き残っている各樹種の更新特性が噴火後の森林の種組成に大きく影響すると考えられた.ただし,新燃岳の噴火活動は依然として予断を許さない状況にあり,今後の噴火次第では更に大きな撹乱が加わる可能性があることから,引き続き植生モニタリングを続ける必要がある.