| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-15 (Oral presentation)
森林の植生や樹木の個体数、バイオマス等を推定する際、推定結果の信頼度はサンプリング手法に左右される。本研究では、緯度と経度に基づき格子状にプロットを設定する手法(以下「格子点法」)により森林植生の推定を行い、結果についていくつかの吟味を行った。
本研究のフィールドである龍谷大学所有の実習林「龍谷の森」は、約38haの放棄里山林である。この森の全域に緯度と経度それぞれ2秒(南北約61m、東西約50m)間隔に半径5mの円形プロット(全127個)を設定し、毎木調査(DBH>1cm)を2009年と2010年に行った。毎木調査の合計面積はおよそ1haで、龍谷の森の約1/40である。
この毎木調査において58種の木本種を確認した。これらの樹種の分布の相関を調べ、主成分分析やクラスター分析を用いて3つの植生タイプ(コナラ優占、ヒノキ優占、多種混合)に分類した。さらに、2003年撮影の航空写真より作成された相観植生図と比較し、推定結果の妥当性を検討するとともに、森林植生の時間的な変化を推定した。
その結果、面積割合として森のおよそ半分を占めていたアカマツ群落が1割程度に減少し、その多くがコナラ群落に変化している一方で、ヒノキ人工林はほとんど分布を変えていなかった。さらに、2003年のコナラ群落は2009年にはコナラ優占植生に、ヒノキ人工林はヒノキ優占植生に、アカマツ群落は多種混合植生に概ね変化していることが分かった。