| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-18 (Oral presentation)
半自然草原の保全において,残存する草原の保全は最優先に取り組むべき事項であるが,草原を再生させて,その範囲を拡大させることも,大切な課題と考えられる.以前は草原であったが管理放棄により樹林化した場所で草原生植物の再生が可能になることがわかれば,再生箇所を絞り込む目安になると考えられる.
そこで,島根県大田市の三瓶山において,約30年間草原管理が放棄され樹林地に変遷した場所を対象に,間伐と下刈りを組み合わせた3種類の処理を行い,草原生植物の再生の可能性を追跡した.間伐と下刈りを行った区を間伐下刈区,間伐のみを実施した区を間伐区,処理を加えなかった区を対照区とした.それぞれの区で処理前に毎木調査を,処理前および処理後5年間,下層植生を対象とした植生調査と光環境の調査を行った.
間伐下刈区と間伐区では,処理前にはみられなかったアリノトウグサ,ノアザミ,コウゾリナ,オトギリソウ,ミツバツチグリなど,草原生植物が新たに出現した.ただし,間伐下刈区では,出現種数が増加し草原生植物の生育が継続したが,間伐区では,時間の経過とともに草原生植物の出現は減少する傾向にあり,萌芽再生した木本類やイバラ類が中心となった.そのため,草原跡地の樹林地において間伐と下刈りを組み合わせた複数年にわたる管理は,多種の草原生植物を複数年にわたり継続させる管理であると判断された.
光環境の調査では,管理再開の初期において,相対光量子密度が高さ1.0mで約40%,高さ0.1mで約20%であれば,草原生植物の比率が2割を占める結果となった.また,地上付近の相対光量子密度が概ね20%を上回ると草原生植物の比率が高い方形区がみられるようになった.これらの種が多種生育するには,少なくとも20%以上の相対光量子密度が必要であると考えられた.