| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-20 (Oral presentation)
北海道苫小牧市東部のウトナイ湖周辺において、氾濫原フェン(ツルスゲ、イワノガリヤス)と谷フェン(ヤチスゲ、ハンノキ)で、水位、ECとpHの連続自動観測、アルカリ度測定と各種イオン分析を行った。
自動観測データを任意に3分割(51日区切り)、5分割(30日)、9分割(17日)と22分割(7日)で区切り、区切りデータごとに平均値などの統計量を求めた。また、5 mm以上の降雨でも同様にデータを区切った(雨区切り)。次に、それらの全期間の平均値について、谷フェンと氾濫原フェンの間の差をt検定で求めた。
雨区切りは、水位の変動幅と標準偏差、ECの最小値、pH変動幅と標準偏差で有意差を示し、特に水位の変動幅と標準偏差は特に大きな有意差が見られた。雨区切りが、連続データの区切り方としては最も適切であった。
フェンの変異に対して重要な季節は、t検定より乾燥期の盛夏と集中豪雨の起こった晩夏であった。氾濫原フェンにおいて盛夏は、水位が低下し、ECやpHの上昇が見られた。晩夏は洪水イベントによる水位上昇が起こり、pHやECが複雑に変動した。
フェンのpHはCa2+などの陽イオン濃度で決まるアルカリ度の違いによって規定されており、湖水はアルカリ度が高く、雨水はアルカリ度が低かった。
氾濫原フェンは、激しく変化する水文化学環境によって維持されている。水位、ECとpHは降雨による雨水希釈、湖水の流入や、その後の蒸発濃縮によって大きく変動する。
谷フェンは、安定した水位、ECとpHよって維持されている。傾斜地に分布しているため、湿原の表層水は流水によって常に置換されている。このため、水位が安定し、ECとpHは雨希釈と蒸発濃縮の影響を受けずに安定している。