| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) C2-14 (Oral presentation)
北海道では、近年、大型の蛾(クスサン)の幼虫が大発生し、食害を受けたウダイカンバ林冠木が衰退(樹冠の枝が部分的に枯死する現象)する事例が報告された。しかし、激しい食害を受けたウダイカンバが一様に衰退するとは限らない。衰退の程度は個体間で大きく異なり、健全な個体から枯死寸前と判断されるものまで様々である。そこで、個体間の衰退程度の違いに影響する要因を明らかにするため、食害の程度と衰退程度の変化を個体レベルで調査した。
調査は北海道中央部に位置する奈井江町のウダイカンバ二次林で行った。2006年6月に46個体(平均胸高直径31.6cm)のウダイカンバを観察木として選定し、2009年6月までの間、各個体の食害の程度と衰退程度を調査した。食害状況の調査は各年の7月下旬に行い、目測により葉の失葉率を個体ごとに評価した。また、食害から約一月後の8月中旬に二次展葉の有無を個体ごとに記録した。衰退の程度は各年の6月中旬に行い、樹冠全体に樹冠全体の枝に対する枯れ枝の割合として評価し、この割合をもとに個体の衰退程度を健全、軽微、中度、重度に区分した。
2006~2008年のそれぞれ7月中旬にクスサン幼虫の大発生し、観察木は様々な程度で失葉した。失葉率の大きい個体ほど二次展葉する確率は増加し、食害の程度によってその後の枝葉の応答が異なることを示していた。2009年6月時点では、観察木の46%が中度、または重度の衰退木と判断された。中・重度の衰退木となる確率(衰退確率)を目的変数、過去3年間に二次展葉した回数と個体のDBHを説明変数とする一般化線形モデルを行った結果、DBHが小さく、二次展葉した回数が多い個体ほど、衰退確率が増加していた。このことは、食害後の応答が同じであっても、DBHが小さい個体ほど衰退木となりやすいことを示している。